居心地の悪さに、生駒 晴枝(いこま はるえ)はまどろみから醒めた。
腕が、足が、ジーンと痺れて感覚が薄い。肩関節には少し痛みを感じる。
「うーん……」
不快感にうめいて目を開ける。
「……!」
拘束された女性の姿が目に飛び込み、驚いて瞬時に覚醒した。
「おうぃあお!?」
(どうしたの!?)
慌てて立ち上がり、駆け寄ろうとして、晴枝は自分の身体が動かない事に気付いた。
逃れようのない厳しい拘束に囚われていた事を思い知った。
「ぅえっ……?」
そしてハッする。
ここは晴枝が教師として勤務する女子高校の体育館。目の前にあるのは新体操部やダンス部が使う大きな鏡。
全裸の身体を黒革の拘束具で縛(いまし)められ、パイプ椅子に固定され、ボールギャグを嵌められた女性は……自分自身!
(そうだ、私は襲われて、拘束されて、そして……)
「いひゃーっ! ぁいおええ!」
(いやーっ! 何コレーっ!)
気付いた晴枝は拘束に抗い、めちゃくちゃに暴れた。
しかし全身を締め上げる拘束具はゆるぎもせず、ただミチミチと革鳴きの音をさせるだけ。
「あふへへ」
(助けて)
やがて晴枝は抵抗を諦め、力なくうなだれた。
ボールギャグの穴からツーっと涎がこぼれ、晴枝の豊満な胸を濡らす。
それが晴枝の羞恥心を煽り、無力な身体が切なくて晴枝はポロポロ涙をこぼした。
「で、コレがその時の生駒先生の画像」
2時間目と3時間目の間の休み時間、吉野 桜(よしの さくら)がスマホに保存していた画像を見せた。
「ひ、ひえーっ!」
どれどれとディスプレイを覗き込んだ此花 咲子(このはな さきこ)が奇声を上げて飛び上がる。 クラスでは普段もの静かで、クラスメートとはしゃぐ事もない咲子の悲鳴に、休み時間の喧騒に包まれていたクラスがしんと静まり返り、全員が桜と咲子を注目していた。
「あはは……何でもない、何でもない」
焦って手を振り、誤魔化す桜。その間に桜のスマホを奪い取った咲子は画面を凝視している。
「どう、思う?」
画面を指でいじくって画像を拡大したり縮小したりしていた咲子に訊ねる桜。
「拘束具はアダルトショップで売ってるようなオモチauじゃないわね。すべて人の身体を拘束するために、きっちりと作られたホンモノの拘束具。唯一ボールギャグを覗いては」
桜の顔も見ず、咲子は画面を凝視したまま答えた。
「ボールギャグ?」
「口に嵌められてる猿轡みたいな拘束具よ。ほら……」
咲子が画像を拡大した。
「口に入れられてるボールに穴がいっぱい開いてるでしょう? これじゃ口に嵌めても声が漏れる。これは口を塞がれたっていう拘束感と、穴から涎が垂れる羞恥を愉(たの)しむための、SMプレイの小道具よ」
(拘束感と羞恥を愉しむって、あんた……)
ツッコミたい気分を抑え、桜はさらに咲子に訊ねた。
「で、この画像からわかる犯人像は?」
「そうね……犯人は拘束具に詳しく、人を拘束するコトに慣れている。生駒先生に歪んだ恨みを持った変質者で…」
そこまで言って、咲子はようやく顔を上げて桜を見た。
「そして学校関係者」
「だよねー。同じ推理で安心したわ」
「でもこの画像だけじゃそれ以上絞れない。他に情報はないの?」
と、そこまで話した時、授業時間を告げるチャイムが鳴った。
「放課後また話そう」
「じゃあ桜の家に行くわ。ちょっと寄り道してからだから遅くなるかもだけど」
「わかった」
咲子が握りしめるスマホを奪い取り、桜は自分の席に戻った。
吉野 桜と此花 咲子。どちらも私立剛柔女子高校2年生。
桜は水泳部に所属する、真っ黒に日焼けした元気印。咲子は太陽の光に当たった事すらなさそうな、病的なほど白い肌の少女。
対照的な2人は、学園では知る人ぞ知る女子高生探偵コンビだった。
「お待たせ」
「おっそーい」
暗くなってから訪れた咲子を、桜は口を尖らせて迎えた。
「あら此花さん、いらっしゃい。後でお茶持っていくわね」
と、桜の母。
「いえ、お構いなく」
微笑んで一礼し、そつなく答える咲子。
「あーあ、姉ちゃんが此花さんの半分くらいおしとやかだったらなー」
そう言った弟の頭にグーパンチを食らわせ、冷蔵庫から麦茶のボトルを取り出し、コップを咲子に持たせ、背中を押すように階段を上がった。
「で、他の情報は?」
「あ、コレコレ」
桜の部屋に入るなり咲子に急かされ、桜は愛用の旧式PCを立ち上げた。
「実はね、今日見せた画像には動画もあるの。画像も動画も、けっこーあちこちのサイトに上げられてて、さらにそれがコピーされて別のサイトに上げられたりして、先生の名前で検索したら無数にヒットするくらい」
「実名を晒して上げられてるの? ずいぶん酷いコトするのね」
「明らかに恨みによる犯行ね。たぶん先生にフラレた男が逆恨みして、犯行に及んだ」
「決めつけるのは早計だと思うケド……」
言いながらトロンとした目で動画に見入る咲子。心なしか呼吸が荒い。
(こいつ、ぜったいドMだ……)
ちょっと引きぎみな桜に咲子が視線を移す。そして咲子はにまーっと笑い、持ってきたスクールバッグのファスナーを開け、中身をひっくり返した。
どさーっと中身が落ちる。黒革の塊。まさか……。
「それじゃ現場検証してみましょう」
「まさか、拘束具?」
「そうよ、画像の拘束具にほぼ近いものを借りてきたの」
(借りてって、どこでだよ?)
ツッコミたいが、ツッコむと余計ややこしくなりそうで我慢する桜。
「それじゃ、服脱いで」
「へ……?」
「脱がなきゃ現場を再現できないでしょう?」
「ってか、なんで私?」
「あなた、縛り方わからないでしょう?」
「う゛ー……」
(なんであんたは知ってるのか聞きたいよ……)
泣きたい気持ちで桜はパジャマ代わりのトレーナーに手をかけて脱ごうとして、
「水着じゃ、ダメ?」
桜は最後の抵抗を試みた。
続く。
女高中生侦探 樱与咲子 1
女子高生探偵 桜と咲子 1
将几年前写的小说,按照现在的喜好重新进行了改编。为了测试小说功能是否可用,顺便进行投稿。由于是用手机投稿的,不确定是否能正常发布……