ゴジはカリファ達がピーカを軍艦の牢に収容している間にヴィオラへと歩み寄った。
「ヴィオラ王女!例のシュガーって子を気絶させたらホビホビの実の能力は解除される。その認識で間違いないか?」
「は、はい!間違いありません!」
ヴィオラはゴジの質問に咄嗟に答えたものの、未だにゴジ=ファイブクロック博士であるという衝撃の事実による驚きからは解放されていなかった。
「彼女は何処にいるか…分かるか?」
「は、はい!シュガーはドレスローザ城にある自室で寝ていたけど、今は私の裏切りに気付いてトレーボルとともに安全な地下のSMILE工場に避難しています!あ、先行した“黒檻”が父と合流し、“船殺し”が襲撃してきたディアマンテ軍のセニョール・ピンクを接敵と同時に仕留めました!続いて彼女達はマッハ・バイス、ラオG、デリンジャーの各個撃破に入ったわ!」
ヴィオラはギロギロの実の能力でドレスローザ王国の全土を見通すことが出来るため、ゴジに聞かれたこと以外の情報も伝えた。
「本当に全て見えてるんだな!まぁ、ヒナ嬢は強いし、ミキータとコアラは俺の愛弟子だから全く問題ない!さて、孔雀ちゃん!」
「はいはい!急がさなくてもちゃんと分かってるわよ♡SMILE工場の制圧とシュガーの撃破が最優先ね!ねぇヴィオラ王女!地下には何人の幹部がいるの?」
孔雀はヴィオラから必要な情報を引き出していく。
「は、はい!トレーボル、シュガーの他には同じ最高幹部のディアマンテ、ジョーラ、グラディウス、ベビー5、バッファローの五人です!彼等の能力は──。」
ヴィオラは孔雀達に自分の知りうるトレーボル達の能力を伝えた。
「貴重な情報ありがとう!じゃ、あたしらも行ってくるわね!きっちり調教してくるわ♡」
「王女様にこれだけお膳立てされちゃ負ける訳にはいかないねぇ!」
「地下に入れば後は私が感知しますよ!」
「が、頑張ります!」
孔雀、ギオン、アイン、たしぎがSMILE工場制圧のために船から降りてドレスローザの街に向かって行った。
「四人とも頑張ってなぁ!」
「気を付けてねぇ!」
ゴジとナミがそんな彼女達の背中を手を振って見送った。
「あれ……ってことはドレスローザ城にはほとんど敵が残ってないんじゃないか?」
ゴジはドンキホーテファミリーの名前くらいはある程度把握しているので、ほとんど全員の名前が呼ばれたことに驚いた。
「はい!ドレスローザ城に残っているのはドフラミンゴ本人と彼の秘書であるモネだけです。マンシェリー王女が捕らわれている鳥かごもモネが手にしています!」
「なぁ〜んだ!向こうも船長同士、秘書同士のタイマンが望みかよ!!」
ゴジはドフラミンゴの意図を悟って、楽しそうな笑みを浮かべるとレイドスーツの入った『試』と書かれた白い缶を取り出すと自分の下腹部に押し当てた。
「その姿はクロコダイルを降した…あの時の衣装!?」
ヴィオラはゴジの純白のレイドスーツ姿を見て、驚きとともに笑みを浮かべた。
「マンシェリー王女の場所が分かってるなら作戦変更だ!ヴィオラ王女はここで待機してリク王を出迎えてあげてくれ!」
「は、はい!」
「じゃあ、ナミ、ステューシー!そして13日の金曜日にクロ!留守は任せたぞ!」
ゴジはカリファをお姫様抱っこして浮遊装置でふわりと浮き上がると待機組に声を掛けた。
「「任せて!」」
「クエッ!」
「ミャー!」
「ジリッ!」
ナミとステューシーは笑顔で返し、ペット組は敬礼で応じると、ゴジはカリファを抱えて空を駆けて夜空を切り裂く白い彗星となった。
「皆行ってしまった!本来ならば敵地に乗り込むゴジ中達を心配すべき場面なのに…何故かしら?全く不安がないの!?それどころか……ごくっ!」
ヴィオラは堪らず胸を押さえた。
「胸がバクバクと高鳴ってる?」
ナミは一度ゴジに救われているからこそ、ヴィオラに共感出来るのだ。
「そう!そうなのよ!」
ヴィオラはナミの言葉に同意し、困惑していた顔を一変させて笑顔を浮かべた。
「ねぇ、ヴィオラ王女!そういうゴジ君のような助けを求めた人に絶対の安心感を与える存在を一言でなんて呼ぶか知ってる?」
「えっ?あぁ……うふふっ!そうよね…子供の頃に感じたこの感情の高鳴りをしばらく忘れていたわ!ヒーロー!そう…ヒーローに助けられるってこんな気持ちなのね!」
ヴィオラは目の前でレイドスーツ姿に変身したゴジを思い出してナミの問いに対する答えを口にした。
「えぇ!そして私達はゴジ君のSWORDよ!」
ヴィオラはステューシーの言葉でゴジ達の部隊名の由来を知って驚くと同時に視界を飛ばしていたヒナ達の勝敗を目撃し、目を見開いた。
「凄い!“黒檻”達がラオG達を降して父と共にこちらに向かってるわ!」
ヴィオラは嬉しそうにヒナ達の勝利を報告した。
◇
ドフラミンゴの元へリク王の拿捕を命じたセニョール・ピンクの取り巻きの美女の一人から連絡が入る。
『プルルル……ガチャ、俺だ。』
『わ……若様…大変です!セニョールが私達を庇って倒されて、ラオG様、マッハ・バイス様、デリンジャー様は敵に捕まりました!』
『っ!?おい…落ち着いて詳しく話せ!』
ドフラミンゴは報告に驚き、イラつきながらも努めて冷静に詳細な報告を促した。
『は、はい!えっと…まず───。』
セニョール・ピンクの取り巻きの美女達は自分達の見た一部始終をドフラミンゴに報告した。
『なるほど…“黒檻”、“船殺し”、“海拳”の三人にラオG達が敗れ、リク王を奪われたのか…報告ご苦労だった!セニョールを任せたぞ!』
『は、はい!では失礼します!ガチャ…ツー…ツー…!』
ドフラミンゴは静かに電伝虫の受話器を置いた。
「若様!やはり“白麒麟”がこの国に!?」
ドフラミンゴの傍で報告を聞いていた緑髪の美女モネが驚きを以て尋ねた。
「あぁ!この国の地理に明るくないはずの“黒檻”達は俺達よりも先にリク・ドルドに接触していたということはヴァイオレット…いやヴィオラは既に“白麒麟”と接触して、ヤツはこの国乗り込んでいる!」
ドフラミンゴはヴァイオレットの裏切りを確信し、彼女を仲間としてのコードネームではなく裏切り者として本名で呼んだ。
「じゃあ!ピーカ様と連絡が取れないのも…」
「ピーカには奴の軍艦を発見すれば足止めして報告するように命じていた。石の中にいるピーカをならば捕えられることはないと思っていたが、あの小僧の力は想像の上を行っていたようだ…全て俺の失態だ!ピーカやセニョール達には悪い事をした。」
ドフラミンゴは部下の失敗を当たり散らすような真似はしない。自分が命令を与えて失敗すればそれは命令を降した自分のせいだと素直に受け入れる度量がある。
「そんな…!?」
「モネ!SMILE工場とシュガーの守りは固めてあるな?」
「はい!シュガーにはトレーボル様と…」
モネがドフラミンゴに報告を始めた。
「ディアマンテ、ジョーラ、グラディウス、ベビー5、バッファローが付いてるから問題ありませんかな?お嬢さん!」
「誰っ!?」
モネの報告を引き継ぐように話した声に気付いたモネが後ろを振り向くと、窓に月光を背にして純白の衣を纏った白いサングラスと白いヘッドホンを付けた若い男がコートを風で靡かせながら立っていた。
「貴方は!?」
「おい!人の家に入る時はお邪魔しますと声を掛けるのがマナーだと習わなかったのか?“白麒麟”!」
モネが正体に驚いて声も出ない中、ドフラミンゴは窓に立ってニヤリと笑うゴジをギロリと睨み付けた。
「人の国を荒らす泥棒を捕らえるためにわざわざ声を掛けて侵入する海兵はいないだろう?“天夜叉”!」
ゴジはドフラミンゴの睨みに動じることなく笑い掛けた。
「こちらの御方は私達が責任を以て故郷に送り届けさせていただきますね!」
カリファはゴジとドフラミンゴが睨み合い、モネが放心している隙を付いて、モネが持っていた鳥かごをひったくっていた。
「あっ!?返しなさい!」
モネがカリファに距離を詰めながら鳥かごを奪い返そうと手を伸ばした。
「あ、鳥かごは必要ありませんからお返ししますね!」
「っ!?」
カリファは素早く鳥かごの中にある小人を取り出してから殻となった鳥かごをモネに向けて放り投げると、グサッという音ともに彼女の顔に鳥かごが突き刺さっていた。
「そちらの秘書の反応をみるに彼女がトンタッタ族の王女、マンシェリー王女で間違いないようだな?」
ゴジはカリファの左掌で眠っているドレスを着た鼻の尖った小人の少女を見て頷いた。
「はい!しかし、この騒ぎでも眠ったままとは見た目は小さくとも中々の大物のようです!」
カリファは掌のマンシェリーを起こさぬように気を使いながら海軍コートのポケットに彼女を入れた。
「その女を返しなさいって言ってるでしょう!」
モネの顔に突き刺さった鳥かごが床に落ちると顔の半分が崩壊した彼女の周りから吹雪が巻き起こり、彼女の姿が頭から順番に雪に変わって崩れ始めた。
「なるほど…ロギアですか?」
そして、カリファの身体の周りを髪を激しく靡かせる程の吹雪が舞い始めた。
「ご明察!私はロギア系ユキユキの実の能力者で雪女!カチカチに凍らせてから奪って…えっ!?」
モネは自分の能力を解説しながらカリファの身体を凍らせるためにバックハグしながら現れた瞬間、腹部に感じた身を焦がすような熱さに驚いて目を見開いた。
「モネ!?」
ドフラミンゴがモネを心配して声を掛けた。
「なぜ…かはっ!?」
モネはカリファから離れるように後退すると、ぽたぽたと赤い血が滴る彼女の右手の人差し指を視界に入れた瞬間、吐血しながらその場にペタンと座り込んだ。
「ロギアなら無能力者である私を楽に倒せると思ったか?ロギアの能力に慢心する馬鹿ほど狩りやすい獲物はいない!」
カリファは血の滴る武装色の覇気で黒く“硬化”した右手の人差し指をハンカチで拭いて微笑んだ。
「わ、若…さま…。」
モネはカリファの覇気を帯びた“指銃”を受けたことに気付いて血に染まる腹部を手で押さえたまま気を失った。
「モネ!?くそっ…おい!“白麒麟”!随分手癖の悪ぃ女を連れてるようだな?」
ドフラミンゴは目の前でトンタッタ族の王女を掻っ攫われた上、秘書のモネを倒されて不機嫌さを隠すことなく覇王色の覇気をダダ漏れにしていた。
「仕事の出来る女と言って欲しいな!俺の自慢の“秘書”なんだよ!それに手癖が悪いのはお前だろ?俺達の前哨戦に余計な横槍入れてケチ付けんなよ?」
ゴジはドフラミンゴの覇王色の覇気を気にすることもなく、彼がカリファを殺すために左手から放った糸の束を右手で鷲掴みにしながら睨み返した。
「前哨戦は全く以てつまらない結果でしたが、私は邪魔にならぬように後ろに下がっています!」
カリファもドフラミンゴの覇王色の覇気を意にも返すことなく、微笑みながら後ろに下がるとゴジの記録を残すために映像電伝虫の準備を始めていた。
第百二十二话 秘书对决
第百二十二話 秘書対決