成人指定表現、軽いゴア表現、軽い嘔吐表現などが含まれます
苦手な方はご注意ください
この、特有の感じをよく覚えている。ゴールラインを胸が過ぎたときの、一時的な開放感とネガティブな安堵だ。次の緊張を待つだけの不毛な安心だ。
「どうして走ってるんですか?」
ベッドのわきには、十から十二歳ほどの少年がいた。マットレスのふちに指の、第二関節から先をのせ、自信なさげに首を傾けている彼はそれでも、盗み見るようにして俺の目を捉えていた。俺は不自然かつ大人げなくも彼の質問に答えなかった。自身の置かれた状況が特異で、彼の質問よりそれへの驚きに優先度が勝ったためだった。
病に侵されているようだった。患っているような気分だった。俺は、三十度ほどにゆるく傾斜のあるリクライニングベッドの上で、精密そうな医療機器のようなものに囲まれていた。それらに搭載された機能が、数字を読み上げはじめた。電子音声が、淡々と無感情に容赦なく、ひっきりなしに数字を読み上げる。次第に、声に声が重なり始めて、やがて夥しいほどの数字が一度に俺の鼓膜を揺らすようになった。
四肢の感覚がない。ことに、気がつくと少年は一人用に作られた、ふかふかで立派なソファにその見合わない体格を沈めていた。手には見開きを折りたたまれたB5ノートと鉛筆が握られていて、きっと宿題があるのだと思った。
「どうして走ってるんですか?」
再度同じ質問があって、これは大事なカウンセリングなのだから、俺は当たり障りなく答えなければならない。貼り付き合う両の唇を難儀して引き剥がし、喉の奥を震わせようとしたがうまくいかない。そうこうしているうちに目の前の、テーブルクロスで豪華に装飾された大きなテーブルにはあらゆる食べ物が山盛りに積まれていった。黒衣の手から差し出される匙の上には、並べられた料理の一片が載っている。何度飲み込んでも唾液が口の端から溢れ、顎に伝っていくので、俺は仕方なく、その耐え難さを食むのに引き剥がした唇を使った。黒衣が、食え、食えと匙を差し出すので、俺はまた飯を噛む。食事は俺が肥満になるまで続けられた。俺はでぶでぶとした腹と嘔吐感を抱えながら、約三人に握られる手の触覚(男と、男と、女の手だ……いや、男のうち一人は女だったかもしれない)に酷い安心を覚え、抱えた風呂桶に吐き戻した。体型がすっかり戻ってしまうほどだった。吐瀉の器にした便器は、覗き込むと、その中身さえ色を吸い込むほどの黒で、その水面に立ち尽くしている俺は、「靴の裏が黒一色になってしまう」とかを思っていた。公道の白線がびいっと伸びていったのでレースが始まった。いつも通り基準を順に踏み越えるようにして走ったはずが、視界が元々モノクロであるために、俺の敗北は決まっていた。今になってやっと、左足が腿のあたり、右足は脛のあたりで切断されているから、あんなに走りづらかったのだとわかった。「僕の勝ちだね」小宮くんは、四肢の無い俺であるのに、両の手の指をちぐはぐに締め付けるので、幻肢痛が酷かった。俺はその感情が決定事項かのように歓喜して、後ろの、縁の見えないほど広いベッドへと押し倒されるのに抗わなかった。最近は肛門の拡張を頑張っていて、それを褒められながら挿入されるのは気分が良かった。ただ、さっき食べたものの残りがまだ胃に燻っていて、抽挿の度、食道を逆流した。やがて口内に誤魔化せないほどの唾液が分泌されて、それを追うように嘔吐がきた。覆いかぶさる小宮くんの鎖骨のあたりに少しかかる。彼は構わず俺を抱きしめて、それで、俺は。
「どうして走ってるんですか?」
少年がわらっている。先程の可愛げなんて欠片もなく、ノイズの走る画像が嘲笑した。それは、俺への侮辱、さらに言えば俺が小宮くんを愛していることに対する侮辱のように思えた。
「俺は」
喉の詰まる感じを無視して発声する。
「また」
本当のことを誰かに伝達するとき、どうしても躊躇した。一種の躁のような状態のときでないと、俺は強くなれない。でも、今は言わなければならなかった。彼に、ただの子供に、伝えなければならない。俺は走らないと生きられない。俺は走ってないと死んでいるんだ。
「生きたいから……」
「変なの!」
少年が、打って変わって純真無垢な声色を聞かせるので、俺は病人の布団ばかりを映していた視界をついそちらへ向ける。かわいらしい喜色満面で、少年は俺の現実について教えてくれた。
「もう走らないって決めたのに!」
睡眠からの覚醒を自覚し、目尻に浮かぶ無価値の分泌物を親指で拭った。
「仕事……」
不眠だ。
とはいえ別にそんな深刻な話ではない。日中は眠いにしてもなんとか耐えられる程度、それなりに眠れている。悪夢でときどき起きてしまうのと、夜中に考えすぎて寝つきが悪い程度だ。いや、寝つきが悪いから考えすぎるのかどちらかはわからないが……。鶏が先か卵が先かとかはどうでもいいことで、重要なのは解決するかどうかだ。答えを言えば、解決しない。解決策が無い。俺はもう全てをかけて走る行為をしないと決めたからだ。世界一単純で何より苦しく、あらゆる全てに適用される解決方法を放棄した。そういう選択をしておいて、まだあの瞬間が恋しいから、起きたら忘れるような夢ですら苦しい。得られるものはあれだけでいいと思っていた。あの一瞬間は絶対にそう思っていた。あのときばかりは永遠があった。だから、現在という永遠ではない場所で、本能の部分の俺が少しだって納得していない。物分りが悪い。
金と時間の消費先が人格形成の一部とされるならば、俺を作ったうちの大きな一つはちっぽけな距離だった。永久みたいな距離だ。いや、そうではなくて、俺が生きているのは、生きられているのは、生かされているのは漏れなく全部、一〇〇メートルのせいということだ。ということは、俺は今現在、死んでいるように思う。俺は本気を味わえる機会を今後永遠に失った。少なくとも一〇〇メートルに関して奪われないはずだった幸福感はもう、俺には、無い。無いままに、人生の残り時間が俺の前に大きく横たわっている。今はひたすらに、理由の無い焦燥感とか理由ある絶望感とかの、人生におけるどうしようもない不快が忘れる間もなく背中をひたひたと這いずり回っている。
むしろ正しい。本来、全ての事象への特効薬など無い。走る行為が俺だけの思い込みの、一種の宗教であったとして、全ての解決を図るのは、身に余るようだ。俺はもっと、ごく生活的な焦燥感とか絶望感とかを感じて、すべからく人間的であるべきだ。
だから俺は仕事に行かなければならなかった。
仕事、仕事だ。俺には仕事がある。ほとんど死人のくせ、生活のための仕事をしている。次世代の育成という尊い仕事だ。これが結構面白かった。その才能が未だ氷山の一角かのような学生たちを相手にして、示した手段が功を奏したとき、仕事というものの素晴らしさと恐ろしさを知った。俺は多分、指導者に向いた性質を持つ。乾いた笑いが出るほどだ。
……緩慢に上体を起こした。ベッドサイドテーブルに置いた携帯端末に触れると、画面は四時十七分を示していたので六時のアラームは切っておく。
柔軟をし、飯を入れ、洗濯と軽い運動まで済ますと手持ち無沙汰になった。毎日この持て余した時間に困っている。予定より早く起きるのが常となってしまっていて、一通りルーティンをこなしたとしても時間が有り余る。なにか身になることでもすればいいものの、これといって趣味もなく、ただ無為にやり過ごす以外に時間の使い方を知らない。本来睡眠時間だったことであるし、休息時間だと思うことにしようと決めたのは数週間前だが、寝る以外の休息というのもいまいちぴんとこなかった。
いつものようにぼうっとベッドに腰を下ろしていると、テーブルに放置していたスマホが低く唸った。液晶には通知タブが並び、最も上に位置するメッセージが俺の視界に入った。今週の俺の予定についてを尋ねる、小宮くんが選出した文字列は随分白々しいように感じられた。
俺は、彼が何を考えているのかをはかりかねていた。よくわからない。交際だって調子に乗った俺が勝手に始めさせたようなものだ。彼が俺に恋愛的好意を持っていたとして、交際願望があったかまでは定かではない。その上、恋愛的好意が確定的かさえも今思えば疑念がある。なぜなら、あのときの俺は初めての感情に酔っぱらっていて、彼も同じ感情を抱えているのだと信じたり、そうじゃなかったりした。最終的にはそうなのだと信じこむことに成功した。そして自白を仕向けた。思考と言語を合致させることがいかに難しいかを俺は知っているはずだった。それが誘導されることならなおさらだ。ただ、彼が俺に向けているらしい性欲だけは本当のようだったので、せめてもと思い、性的接触は何度か図った。始めは触り合う程度だったのが、数週間かして、挿入に至った。俺が先導していたつもりが、焦っていたのだろう、粘膜が裂けてそれなりの出血があった。恥ずかしさと痛みで混乱していたのが、彼の表情を見た瞬間に血の気が引いた。決して罪悪感を与えたいわけではなかった。半ば追い出すようにして帰ってもらったあと、トイレで喉に中指を入れた。自己嫌悪は喉奥に燻ったまま出てこなかった。
正直もう会いたくないし、全然会いたい。
心は制御が効かないゆえに、感情の濁流に溺れるのは疲れるし面倒くさい。行動も暴走する。俺は恋愛に向いていない。小宮くんのことも恋愛のこともよくわからない。だが、洗浄して尻に指を入れるあの恥ずかしくて惨めな作業をする理由が、彼への感情から来ていないことなどない。
スマホを拾い、メッセージアプリを開く。しばらく左側の文字を眺めたあと文面をしつこいくらいに修正してから送信した。「今週忙しいから週末は休息にあてたい」まあ、別に嘘でもない。
俺はスマホを机上に放ってから、仕事に行く準備のために、ゆっくりと立ち上がった。
小宮くんの車は眠気を誘うほどに乗り心地が良かった。総合病院の駐車場を左折で出て、静かに走行を続けている。シーツは沈むようだし、がたつきをほとんど感じない。空調も丁度よく、雨で蒸す外の天候がまるで他人事だった。俺は彼から逃れるように首を左の方へと向けて、窓の外をぼんやり眺めていた。本当は後部座席に乗りたかったし、もっと言うなら今このタイミングで小宮くんが運転する車になんて乗りたくなかった。本当はバスで帰るつもりだったのに、病院の自動ドアを抜けた途端全身真っ黒の、傘さえ塗りつぶした黒色の、死神みたいな男に第一声「送る」なんて話しかけられるのだから仕方なかった。そのひとが恋仲の人間であれば尚更。彼は、俺の身体の調子や今の状態などについてなどを二、三聞き出したあと、助手席のドアを開いた。そのとき俺は自分の不誠実に自覚的になって、彼の健気さを受け取るべき人間なのかを疑わしく思った。
「言ってほしかった」
普段よりも若干低い声で彼がそう言ったので、俺は思わずそちらに視線をやった。小宮くんは予想した通りに、ワイパーが左右するフロントガラスの先ばかりを見ていて、俺は話しかけられたことを疑う。
「何を?」
先行車のブレーキランプに反応した彼の右足がブレーキを踏んで、ほんの少しの強引さを伴って車体は停止した。ヘッドレストから後頭部がやや離れる。
「倒れるくらいの……なにか、原因があった……ことを、だよ」
「ただの不眠だ」
「不眠の原因は」
信号の色が変わって、彼の足は緩やかにアクセルを押した。静脈血みたいな色をした車が国道を走って、俺のアパートへの距離をどんどん縮めていく。俺はこっそり頭の中で到着までの時間を考える。はやく終わりたい。不誠実だとして糾弾されるのはつらい。嘘はつかずとも不誠実な人間にはなれる。
「不眠の……原因は」
小宮くんは淡々と俺を急かした。悪いと思っているから、そんなに苦しめないでほしかった。それに、「夜の失敗を気に病んでいます」なんて言って彼に余計な罪悪感を与えたくない。
「いろいろだよ」
「トガシくん」
「いろいろだって、本当にさ」
「各种事情是什么意思」
他用仿佛迷路般的声音问道,我倒是有些恍惚地想,这问题倒是该问我才对。
「工作之类的」
「不顺利吗」
「啊,算是吧」
「户桦君」
敷衍的回应似乎无法蒙混过去。如果是那种人的话,根本不会来我连提都没提过的医院。
「没有,挺顺利的。很努力。很开心。很适合我」
「那为什么……为什么呢」
「为什么」大概是在问「为什么明明工作顺利却累垮了」。但这种事我自己也想知道。为什么我现在会变得如此狼狈。
「大概是田径的原因吧……」
带着辩解意味说出实话时,嘴角会不受控制地歪斜。那种无法自主的肌肉运动令人不适。
「什么意思」
小宫君微微显露出动摇,我觉得那样很可爱。
「应该没有身体上的压力」
「就是因为没有身体上的压力啊」
觉得他可爱,想稍微为难他一下才这么说的,结果他露出了明显写着「难以理解」的表情。我受不了他那侧脸,噗嗤笑了出来。看来我似乎很享受他为我困扰的样子。
「无法为自己奔跑很痛苦,光是这样就失眠了。而且脚也有点痛,最近雨水又多」
为了掩饰难为情,我轻轻伸了个懒腰,坦率地回答,结果意外地没什么大不了的。只是,我如此依赖田径度日的生活方式在恋人面前暴露了,这让我相当不快。
「不可能『光是这样』吧」
「……是啊」
之后的十几分钟,只剩下沉默支配着一切。我甚至觉得这沉默是一种救赎,因为我已经束手无策了。之后的小宫君一直很冷静。他保持着惯常的扑克脸,冷静地转动方向盘左转。家已经近在眼前了。
既然被送回来,连招呼都不打就立刻让他回去不太好,而且最重要的是,我还想和他多待一会儿,便请他上楼了。我从一人独居的房间里,勉强找出仅有的两个马克杯,从橱柜里拿出,倾斜水壶注入热水。就这样端着泡好的麦茶走进客厅时——
「你应该保持健康」
他坐在薄薄的坐垫上,用平淡的语气下达了要我健康的指令。这唐突的话语让我有些措手不及。总之,我把散发着温热的陶瓷杯递到桌上,坐下后,没有回答,而是与他目光相接。
「我有个请求」
他再次提出要求。那过于交汇而令人尴尬的视线移开了,他的视线落向了手边。他操作着手中的手机,将屏幕转向我眼前。因为太近,看不清全貌,我将头向后缩了几厘米,才看清那似乎是测量睡眠时间或质量的应用程序下载页面。
「用这个。我希望你每天向我报告结果」
我想说「你认真的吗」,反射性地看向他的脸。还是那副不苟言笑的样子,但换个角度看,也不能说不是认真的表情。
「我、我可不愿意啊……」
「户桦君」
小宫君用一种不容置疑的眼神看着我。那简直像瞪视的目光让我动弹不得。这已经不是「请求」了,而是命令,是既定事项。
「户桦君。我并不冷静。听说你倒下了,我无法保持理智。我知道你对我很重要,但通过这次我深刻地体会到了。我希望你能安眠。希望你能安心。你应该保持健康。所以,如果你能因此……如果可以的话,请让我安心」
听着他说得越来越没底气,我感到既心疼又怜惜,用手捂住了额头。小宫君说完之前的话就沉默了,我为了拖延时间,啜饮了桌上放着的茶。适宜的温度温暖了喉咙和肚子。
「我知道了」
我捡起随手扔在那里的手机,操作着,像刚才他那样近距离展示了下载应用的画面,但他不仅没有动摇,反而对我同意此事简短地表示了感谢。然后,他说了「对不起」。他道歉了。
「我知道强人所难不好。对不起。对不起」
小宫君微微低下了头。我想,他对我抱有的「希望我安心」的愿望一定非常强烈吧。其实,我也不排斥听从他的愿望。自然垂下的右手中,手机的重量还在。
「小宫君」
我一边想着今天第一次叫了他的名字,一边念出他的名字,然后拥抱了正在自责的他。被我环抱的肩膀颤抖了一下。
「从最后一次之后,你就在避免碰我吧」
小宫君只是沉默着,稍微动了动身子。我对此感到气恼。
「你不是说要让我安心吗」
「啊……嗯,所以,我想在你承受范围内好好追查原因,并采取相应的……」
「抱我」
「…………诶啊」
难以忍受的沉默持续着。我听了小宫君的请求,但小宫君似乎没有听我的请求。我因这凄惨的处境而动弹不得,这时听到了他略深的呼吸声,知道他要说什么了,便做好了承受那内容可能带来的冲击的准备。果然,小宫君开口了。
「关于那件事,我想了很多。然后……我得出了被、被你失望了的结论。所以我完全不明白你为什么这么说。我不想再、再做那种事了,不行吗」
「不讨厌啊」
「失、失败了,伤害了你,因为伤害了你,所以觉得户桦君的不适是我的错……那个,我、我怕你会说……要分手什么的……对不起,那个……」
「不会分手。我也很焦躁。我在拼命寻找能给予你的东西」
小宫君窸窸窣窣地从我臂弯里挣脱出来,用双手掌心轻轻捧住我的脸颊。慈爱的温柔触碰着我裸露的额头,从那缝隙中吹入了安宁。闭上眼睛看着黑暗的意识,一瞬间感到了舒适的睡意,我忍住了。
看来我应该给予他的,并不是性接触(至少,他没有强迫),但我还是想抱他。几秒钟后,接吻结束了,这次轮到我被连手臂一起拥抱——正想着,就被直接抱了起来,脚离开了地面。如果我乖乖不动,他就会开始移动,成年男性的体重,通过两条结实的腿,压在地板上。走了几步,被放下的地方是床垫。我被极其轻柔地仰面放在半双人床上,温柔得让人想笑。啊,嗯……大概没问题。在已经成为日常的晨间舒展时已经清洗过了,之后也没有问题。没问题,大概。
被伸向我的手触碰,我意识到后背开始出汗。我微微垂下眼帘。正当我做好再次被触碰的准备时,从下巴到脚尖,被柔软的布覆盖了。是被子。
「晚安」
小宫君罕见地带着微笑说道,我措手不及,说不出话来。似乎给我盖好被子就心满意足了的小宫君,用一副马上就要回去的样子,向那边走去。
「小宫君。小宫君!」
我用手撑在身后,半坐起来,好不容易叫住了他。他回过头,脸上一副完全不明白我想表达什么的表情。这是我迄今为止学到的,怎么说呢,他似乎对别人给予的好意很迟钝。此外,他还认为自身持有的欲望对我来说是难以接受的。这让恋爱新手的恋爱变得更加复杂。请饶了我吧。
「很奇怪吧」
「没什么奇怪的」
「我说了抱我吧」
小宫君吃了一惊,毫无意义地环顾四周,我竖起耳朵以免听漏。我知道他这个动作之后说的话声音会非常小。
「……对睡眠不足身体不适的人,我做不到那种事……」
我听到了。我因此对「没什么奇怪的」这句话表示理解。「睡一觉健康起来再做爱」是吧。
「啊,是说睡一觉起来再做吗」
「诶!?是、是那样吗」
「小宫君」
「过来」我掀开盖着的被子一角,制造出空间。我用眼神示意他快点过来,但他却一脸不知如何是好地眼神游移。我的手已经开始有点累了。
「安眠需要你」
「有体温差不多的抱枕。刚才在网购网站上买的。明天就能送到……」
「我说需要的是你。想太多睡不着,希望你的话题能转移我糟糕的思绪。我也会努力变健康,你也帮帮我吧。这是你的愿望吧」
我说得煞有介事,最终认输的小宫君战战兢兢地靠过来,在床边蹲下。我等不及了,将手伸到他两腋下,直接把他拉到床上。很重,但对方顺着力的方向,一只膝盖跪到了床单上。终于认命了,他总算完全上了床。
「还穿着外面的衣服」
「没关系」
「会变窄。没法翻身可不好」
「还没到翻身那一步,先得睡着才行」
这不是谎言,但也是谎言。我现在还挺困的。
我用半真半假的话让还在说什么的他安静下来后,决定向他坦白一切。我觉得那样比较好。在我暗自下定决心时,小宫君慢慢低下头,背对着我躺下了。我看着那试图蜷缩起来的宽大后背。「那个啊」,我开口说道,他越过肩膀看了我一眼,然后扭动着身体转向我这边。
关于失眠,我的问题大致有两个。一个是关于过去的人生和未来的人生。生活方式发生了巨大变化,这大概导致了不安和恐惧。理所当然地,这个问题给我带来的压力无法消除。这是由不可逆转的事实导致我做出的选择,而且,忧虑过去和未来是全人类都在做的事情。可以不消除。只是,我应该稍微减轻一下自己过度的杞忧。小宫君说要「追查原因,并采取相应的措施」。原因已经知道了,为了考虑对策,首先必须准确地共享它。
「呃,啊,这个解释起来有点难,我现在,精神上算是死了,或者说……」
小宫君的身体正面转向我这边几秒钟后,我终于开始好好说话了。无论尝试多少次,将思考袒露出来都会紧张。面对语无伦次的我,小宫君只是沉默着——但意识都集中在我身上——等待着。我尽量努力让想传达的事情和选择的词语之间少有出入地发声。
「我被田径拯救了……几乎都是负面意义上的。所以,每当想起无法认真奔跑这件事,就会感觉像死了一样」
自己的声音很冷静。能够冷静地传达自己的状况。我一边拼命驱赶着不知何时袭来的睡意,一边传达着。
「无法再与你分享那份幸福,这很痛苦。现在想来,那是我能给予你的最大的益处」
视野的三分之二都映着眼睑内侧。
「而且最重要的是……我自己,还想要那个瞬间。虽然明知已经无法再得到了。啊……所以怎么说呢……」
在黑暗中,我被小宫君拥抱着。他的体温,温暖着我从肩膀到脚的大半身体。
「我,其实,还想奔跑啊」
在最后关头,我感觉到一股巨大而沉重的热度,抚摸着我的太阳穴。
睡着了。
我睡得非常舒服。睡得很沉,连梦都没做。看了看房间的挂钟,短针指向七点附近,有那么五秒钟我没能理解这意味着什么。窗帘外透进晨光,也就是说,我从傍晚被哄睡着后,一直睡到了早上七点左右。
“工作……”
我这么想着,但想起公司那边已经安排好了,电话里说“暂时休息一周左右吧”。不过,比起这个,我更在意的是他。我撑起上半身。
“小宫君”
蜷缩在旁边睡着的小宫君被我一摇晃,发出从未听过的低沉呻吟。我虽然有点被吓到,但还是拍了拍他的肩膀——这大概关系到他在日常生活中的社会信誉吧。
“小宫君,练习呢!计划呢!”
“没有……”
任由自己被摇晃着的小宫君认出是我后,一边粗鲁地揉着眼角一边回答。声音依然低沉得可怕。我以为和他相处的时间已经不算短了,但这却是第一次知道。我将那份小小的喜悦推到一边,暂时对他的回答感到安心。
“睡过头了。”
“户柏君能睡这么多,真好。”
小宫君慢吞吞地坐起来,稍微犹豫了一下,然后用双臂轻轻环抱住我。刚睡醒特有的慵懒感反而舒适地包裹着我们。
“精神恢复了吗?”
“嗯。”
“以后也能睡这么多就好了。”
“嗯。”
我们彼此都带着一种模糊的感觉,在极近的距离下低声交谈。我的思绪还停留在半梦半醒之间,一边感到满足,一边开始考虑早饭的准备。我把脚从手臂的缝隙中伸出床沿,正要站起来,却又被束缚住了。
“饿了吧,我来做点什么。”
小宫君什么也没说。从背后被他抱住,我也看不清他的表情。只是,他右手抓着我上臂的手,拇指短而无甲的指腹正粗糙地摩挲着我的皮肤。这带来了暗示和紧张。响起衣物摩擦的细微声音,我知道他正漫无目的地环顾四周。
“那个……”
小宫君缓慢地发出了声音。我不需要竖起耳朵。他就在正后方,简直像是要把气息吹进我耳朵里一样传达着他的意愿。
“我想抱你。”
我的身体像坏掉了一样发出异常的信号。我能感知到最近开始长出的腹部薄肉,正随着心跳而微微颤动。
“户柏君,喜欢。”
“……”
“喜欢。喜欢你。”
“啊……”
“因为喜欢所以想抱你。最喜欢了。户柏君。拜托了……户柏君……”
“等身体健康了再做爱吧。”——这是我先提出来的。为什么我现在会这么动摇。
“户柏君,说‘好’吧……”
我甚至觉得,不等他回答反而更轻松。语言化是一种极其巨大的行为。我试图挤出“好”这个字,却反复因恐惧而退缩。
忽然,我呕吐物溅到他锁骨附近的景象掠过脑海。明明没有这样的记忆,混乱和不快却占据了我。
“害怕吗?”
因为我太过沉默,小宫君这样说道。他那渗出悲哀的声调让我罪恶感倍增。我抓住了因吸汗而变软的T恤胸口。含糊其辞是不诚实的。小宫君已经好好传达了他对我的好感,以及他希望我说出来的心情。我也应该坦诚地公开与失眠相关的所有问题。
“……肌肉……”
未知的记忆让声音颤抖起来。小宫君似乎正静静地听着我的话。
“肌肉流失了。体重下降了……肚子上长了点脂肪。腿很痛。我知道自己越来越慢了。正在远离能奔跑的身体。但是,最近我开始觉得这样也没关系了。因为有小宫君在。”
害怕。身体肉眼可见地衰弱,腿会痛,无法为自己奔跑。但最可怕的,是小宫君甜蜜的话语。他的话语,极其强烈地填满了我。满溢、浸透,没有他,一切都不行了。
“只要小宫君在身边,就算跑不了也没关系——我开始这么想了,这很可怕啊……”
“户柏君。”
小宫君在我耳边呼唤我的同时,解除了束缚,移动到了我的左边。他把双脚放到床沿下,于是我的视野里出现了四条腿。其中一条虽然没断,却已经派不上用场了。
“户柏君还没死呢。但是,也算不上活着。”
小宫君否定了我的死与生之后,又补充道:“不过,按你的理论来说的话。”
“虽然跑不了,但有想跑的意愿。”
如果想跑的意愿就是生,那我永远也死不了。我到底什么时候才能从这诅咒中解脱。
“户柏君。我一直以为我感受到的魅力,只是你的速度和言语。但是,连我自己都无法欺骗,我如此世俗地被你吸引——具体来说,就是光是看着你的脸和样子就觉得喜欢。忘记了契机,本质被衍生的感情篡夺了。我曾以为这是非常不诚实的事,但据说世间称之为恋爱。据说这叫做爱。我爱你。”
小宫君用他一贯的语调滔滔不绝地诉说着爱意。我觉得自己被逻辑且情感充沛地爱着。
“所以啊,户柏君。”
小宫君向前倾身,进入我的视野,温和地笑了。看起来非常开心。
“我来杀你。”
小宫君宣告了杀人。
“我来给你最后一击。因为我爱你。因安心而丧失战意,就是绝对的死。跑不了的户柏君,由我来杀。让我来杀吧。”
我觉得他是个非常重情义的人。我会因他而死,而他似乎也会因我而死。
我颤抖着将空气吸入肺部。
“好啊。好啊。我会,因小宫君而死。”
“谢谢。”
小宫君微微垂下眼帘,从窗帘透进来的微弱日光在他短睫毛下投下阴影。我也和他一样,本质被衍生的感情所篡夺,爱上了他。
“小宫君,那个啊。”
“嗯。”
“已经不怕了,所以……做爱吧。”
说出这句话让我疲惫不堪,我低下头深深吸了口气。趁着他看不见,我任由羞耻扭曲着脸——这时,不知何时爬上来的右手,正轻柔地捧住我的双颊抚摸着。我咬着嘴唇忍耐,被抓住的下巴被操纵着,猛地转向左边。他在那里。时间消弭了距离,我们接吻了。因紧张而紧闭的嘴唇,不到五秒就松弛下来,像嬉戏般被啃咬时,又因发痒而笑了起来。
“要伸进舌头了。”
小宫君像是要把笑个不停的我拉回来似的,特意宣告之后,舔舐着我的嘴唇,软软地、强行从齿缝间挤进了我的口腔。一阵酥麻。舌尖触碰到上颚时,酥麻感传遍全身,使不上力气。我渐渐从床上滑下去,屁股快要掉下去的时候,小宫君用力将我的腰拉了回来。我被放回床上。接着,他让我的后脑枕在枕头上,慢慢地压下身体。他以覆盖在我身上的姿势待着。右边大腿附近传来不自然的肉感,但肌肉使不上力的我对此无能为力。我感受着被捕食的气息,接受了这个吻。唾液分泌旺盛。我的和他的混合在一起,粘稠的液体多次从嘴角滴落。
等我能呼吸的时候,不知何时已经被放开了。我一边擦拭嘴角,一边拼命吸入氧气,这时声音落了下来。
“没事吧?”
“嗯……那个,小宫君,是不是,变厉害了?”
呼吸刚平复下来,我就抛出了一个算不上愤怒的问题。真是不情愿。以前不是这样的。接吻大多是我主动,即使感觉舒服,也不至于到无法呼吸的地步。现在却成了这样。小宫君到底发生了什么。
“稍微学习了一下。”
小宫君是个努力家,学习热情很高。因为他擅长将所学应用到现实中,所以成长速度快得可怕。看来在性行为方面也不例外。
看着发呆的我,小宫君大概判断我已经完全冷静下来了,便把手伸向我的胯间,拉下了拉链。连小小的金属隔着布料摩擦的感觉都让我有了反应。紧绷感有所缓解,但随之而来的是被切实注视着的羞耻。小宫君隔着内裤摩擦,这让我产生了一种类似对抗心的情绪——明明通常是我在做这种事。过了一会儿,内裤被褪去,我那副相当可怜的样子暴露了出来。羞耻感已经饱和了。
小宫君的手指绕到了臀部后方。一根手指沿着穴口,缓缓沉入。我咬着嘴唇,但手指毫不犹豫地戳刺着敏感带,发出了不成体统的声音。明明是被玩弄过的地方,却经不起这么轻的刺激。我开始害怕小宫君所说的“学习”了。小宫君一边逐一询问痛不痛,一边依然执着地攻击着那一点,我的屁股扑腾乱动。在制止的话语形成之前就已崩溃,正当我为此苦恼时,阴茎被纳入了他的口中,这简直让人受不了。
“哈、啊、啊——、啊——!唔、呼、唔、啊……”
与其说是娇喘,不如说是意义不明的喃喃之音,接连不断地从喉咙里溢出。我不知道如何留住被所爱之人强烈催动的快感。我勉强把小宫君的头推开(我觉得那力道几乎只是把手掌放上去而已),试图让他松口,但意愿未能传达,最终还是在他口中射精了。我被快感的余韵、脱力感和疲劳所支配。身体发烫,汗流浃背,远处传来耳鸣。
“户柏君,户柏君。”
脸颊被啪啪地拍打着,我终于回过神来。视线转向声音的方向,看到了一脸歉意的他。
“对不起,勉强你了。剩下的下次再说吧。”
他这样说着——与浑身沾满精液等污物、狼狈不堪的我相反——虽然也出汗了,但衣服一丝不乱。我一鼓作气坐起来,抱住了正探身看我的他的脖子。
“你会杀我的吧?”
我解开手臂,表明了被捕食的觉悟。然后勉强把手伸向床头柜,拿出了避孕套。试图撕开包装,但沾满汗水的手指太滑,怎么也弄不开。终于,一双不是我的手轻轻夺过它,取出了里面的东西。
“我来戴上吧。”
我伸出右手,稍微犹豫了一下之后,它被放在了我的手掌上。小宫君默默地连同内裤一起脱掉了衣服,扔到床下……顺手把上衣也脱掉扔了。盘腿坐着的他胯间高高隆起。一如既往,不,感觉比平时还要大,我不禁露出夹杂着恐惧的笑意。我把避孕套抵在他的龟头上,压住储精囊,像撸动一样套了下去。随着我手的动作,不时传来他忍耐的吐息,感觉很好。戴好之后,我一时兴起,用手挠了挠根部,他发出呻吟声,慢慢地将我推倒。他在我肩头粗重喘息的样子,简直像一头随时会咬上来的野兽。
“小宫君。”
我呼唤着他的名字,用手背抚摸他的太阳穴附近。小宫君顺从地把脸凑过来,我对此感到满足。浅浅地、短暂地吻了一下,最后轻轻咬了一口。
“最喜欢你了。”
“我也是……”
小宫君退开,抬起了我的右脚。我的手掌贴在他的脚底,感觉很烫。有什么东西抵在了我的屁股上,我深吸了一口气。
“户柏君。”
“……”
二回目の息を吐き出すタイミングで、小宮くんはゆっくり、きわめてゆっくりと挿入した。少し進むごと痛みや不調を聞かれるので、奥まで届くころには何分もかかったように思う。俺は完全に前立腺を潰されているのに小宮くんは一向に動こうとせず、刺激が与えられる準備ばかりが進んで生殺しだった。入ってきたものを勝手に抱きしめるので存在こそありありと感じるものの、満足な快感に届かない。早くしろと彼の背中を踵で叩こうが懇願しようが無意味で、俺は半泣きになっていた。
ベッドに脱力しきっていると、彼が覆いかぶさってきて、その際に生まれる僅かな摩擦に喘ぐ。小宮くんは俺のすぐそこで「大丈夫」と聞く。全然大丈夫ではない。全然大丈夫じゃないからと急かすと小宮くんは「うん」と了承した。
抽挿が始まってすぐ、俺は許しを欲しがった。癒着していた凹凸は離れがたく、粘着質で甘いような摩擦を起こして俺に襲いかかった。緩慢な動きで弱点をえぐるので、小宮くんの陰茎の形を思い知らされるようだった。俺は、彼に「動け」と喚いた時間より少ない時間でオーガズムに達した。濁音の、聞くに堪えない声が響いている。余韻が長く引いて、それを身をよじってどうにかこうにかやりすごしたと思ったら、小宮くんが抽挿を再開した。
「ごめん、ごめんね、気持ちいいね」
湿った肌同士のぶつかる音がしている。許容しきれない性的快感が、手先足先を麻痺させるような感覚をもたらす。小宮くんがぐりぐりと最奥に塗り込むように陰茎を押し付けて射精するころ、俺は今日三回目の絶頂を迎えていた。
目を閉じて回復を図っていると、小宮くんが、鳴く動物を黙らせるようにして頬に唇をくっつけた。彼は、俺の額に張り付く髪を避けてささやかに笑う。
「なあ」
彼を呼び寄せ、うすくひらいて舌を見せれば、ちゃんとくれた。それに安心して再度休んでいると、彼の足音が遠ざかっているのが聞こえる。勝手にどこかへ行くなと言いたかったが、俺は疲れていて、さらにはまだ余韻が尾を引いて、声を出すどころか目を開くのさえ億劫だった。…………。
「トガシくん」
低い声に微睡みから引き上げられた。彼が何度も俺を呼ぶので仕方なくそちらを見遣れば、小宮くんが俺の陰茎を手のひらにのせている。先からはとろとろと勢いのない精液が漏れるように分泌されていた。
「トガシくんのちんちん壊れてる」
「きみのせいだろ」
「そうだね……」
小宮くんは壊れたものをやわく握って弄ぶので、力を込められない俺の足が馬鹿みたいに痙攣したし、尿道に残った少量の精液が吐き出されて彼の手を汚した。彼はヘッドボードのティッシュでそれをぬぐってくずかごに投げてから、テーブルに置かれたペットボトルのお茶を持った。
「飲める?」
「起きれない」
給餌は三回に分けて行われた。セックスのあとの水分補給が、これからの人生の隠喩のように思えた。
少年は何も言わなかった。薄暗い空間にぽつんと置かれた固そうな学校椅子の上で、いじけたように両膝を抱えて口元をうずめている。
少年を見ている俺はどうとも言い難い気持ちになって、そいつを抱擁した。
「俺の尊厳、俺の恥、俺の誇り、俺の生、俺の死、俺の人生」
額と額をくっつければ、その瞳と目が合って、やっぱり手放すのは惜しいと思う。でも、もう約束してしまった。
「ありがとう、ごめん、さよなら」
重い。
小宮くんの片腕が俺の胸を横切って、その重量が俺にのしかかっている。それをなんとか押し退け、全身の違和感を無視して上体を起こす。無意識に時計の定位置へと向かった視線の先を確認したのち俺は目をこすった。午後四時過ぎだった。
「寝すぎた……」
「たくさん寝るべきだよ」
未だ寝ているような不明瞭な声が背後から聞こえるので振り返ると、小宮くんが大きなあくびをしていた。彼此に挨拶を交わす。
「身体の調子はどう?」
小宮くんが申し訳なさそうに聞いてくるので、俺はおかしくなって笑った。
「全身痛い」
深刻にならないような口調で言いながら寝間着にしているTシャツをめくると、ところどころに不自然に赤くなったり、打ち身になったりしている。小宮くんはがばりと起き上がって、たくさん謝りながらそれらを撫でて——寝間着? そういえば、きちんと服を着ている。
「服着てる」
「ああ、身体拭いて、タンスにあったのを勝手に……あ、あとお風呂と洗濯機借りたよ。そこのスーパーでお惣菜買ったから、あとで食べよう」
俺は寝起きで、小宮くんも寝起きで、そんな状況で小宮くんが言ったことだったので、今の俺には狂おしいほどの……幸せがあると分かった。それがあんまり俺を満たすので、少し懐疑的になってしまう。
「なんか……寝まくって、しまくって……世界がこの部屋だけみたいだ」
まだぼうっとする頭が、そんな願望を俺に語らせた。幼い思考のそれが恥ずかしくなってきたころに小宮くんは「それがいいな」と言う。
「一緒に住もうか」
彼は思いつきのように言ってから、それが最もいい考えだ、と気づいたみたいに俺の手を両手で取った。寝起きのあたたかい、ごつくて大きな手が俺の手を包んでいる。
「トガシくん、一緒に住もう。君が今日たくさん寝れたのは、僕がいたからという理由である可能性もある。僕を寝れないときの抱き枕にしてほしい。毎日、少しずつでいいからトガシくんと僕だけの、世界にそこだけ存在する部屋が欲しい。とりあえずは僕のとこ来てほしい。部屋がだめそうだったら引っ越して……ああ、僕がこっちに来るのでも構わないけど」
「わかった、わかった行くよ、君のとこ」
俺は怒涛の勢いに気圧されて了承した。たしか遠くないうち更新で、もう少し条件の良い物件を探そうか迷っていたことを思い出す。
「今後一週間は時間あるし、早いうち手続きとかするからさ」
そう補足すれば、彼は照れるように喜んでお礼を言う。
「愛してる。大好きだ。最期まで一緒だからね……」
俺はその言葉ひとつひとつに同意を示しながら、これからの死滅についてを考えていた。
なあ、なあ俺。お前を見殺しにしたのはこの男のためだよ。この愛しい男のせいだ。俺が死ぬのは、死ねるのは、死に永らえるのは、漏れなく全部、小宮くんのせいだ。
それが愛だというのも悪くない。
これは愛というらしい。
死神的挚爱活尸
タナトスの愛しきリビングデッド
户川是反向的反向蜥蜴王(Y)
小宫是妙蛙花